Loading...
今なお正体を知る者はおらず、反権力的なメッセージをストリートで表現するアーティスト、バンクシー。イギリス・ロンドンを拠点とし、世界のいたるところにユーモアとアイロニーをこめた作 品を描き、活動している。彼の作品はオークションで数千万~1億円という高値で取引されることもある。大英博物館やルーブル美術館で勝手に作品を掲出したことや、ディズニーランドを正面から皮肉ったテーマパーク「ディズマランド」を設営したことも有名。
マドンナやBlurのアルバムジャケットを手掛けたことも話題になり、セレブの間でも彼の作品を愛するファンが多い。2017年にはパレスチナのベツレヘム地区にある分離壁の目の前に“ 世界一眺めの悪いホテル”「T h e Walled Off Hotel」を開業。その場所の情勢や政治など環境そのものを作品に取り入れて表現する天才アーティストだ。
2007年、バンクシーはパレスチナとイスラエルを分断する高さ8m、全長450kmにも及ぶ超巨大な壁にグラフィティアートを描くプロジェクトを強行する。キリストの生まれた聖なる街ベツレヘムでクリスマスの観光活性に一躍買うべくバンクシーによって集められた1 4 人のアーティストたち。巨大な壁は一瞬にして彼らのキャンバスとなった。バンクシーは代表作である「フラワーボンバー」をはじめ6つの壁画を残す。
このニュースは世界的にも注目され、ベツレヘムには壁画を目当てに観光客が押し寄せた。しかし、プロジェクトの成功の裏では怒りを露わにする地元民が現れる。その原因はバンクシーが描いた「ロバと兵士」の壁画だ。パレスチナ人をロバとして描き貶められたと捉えた人々は壁画を切り取り、売り飛ばすことを決める。大手インターネットオークションサイト「eBay」に出品された「ロバと兵士」は世界を巡り、思わぬ波紋を呼ぶことになる。
 バンクシー本人が監督し、アカデミー賞®長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』、バンクシーがニューヨークの街を舞台にゲリラ的にアー トをボムしていき人々が狂乱の宝探しに熱中する様を追った『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』。それらの作品では描かれなかった“バンクシーがもたらす負の側面”を本作では炙り出すことにな る。
ロンドンでも、ニューヨークでもないパレスチナに描かれたバンクシーの絵は誰も予想しなかった問題を露呈し、観客に投げかける。芸術の価値とは?ストリートアートは消されるべきか、保存すべきか?壁から切り取られた絵の著作権は誰のものなのか?そしてバンクシーの行為が善なのか悪なのか?このパレスチナから始まる壮大な旅の水先案内人をロック界の伝説イギ―・ポップが務める。
  2007年、正体不明のグラフィティアーティスト、バンクシーがパレスチナ・ヨルダン川西岸地区にあるベツレヘムの巨大な分離壁に6つの壁画を描いた。バンクシーによって集められた1 4人のアーティストと共にキリスト生誕の地に観光客を誘致する前衛的なプロジェクトだったが、描かれた1枚の絵「ロバと兵士」が地元住民の怒りを買ってしまう。彼らはウォータージェットカッターで壁画を切りだし、オークションサイト「eBay」に出品。巨大なコンクリートの壁画はパレスチナから海を渡り、美術収集家たちが待つ高級オークションハウスへと送られることになる。
  5年後、監督のマルコ・プロゼルピオはベツレヘムへ向かい、取材を始める。インタビュー対象者は現地のアーティストや活動家、そして「ロバと兵士」を売りとばす一旦を担ったタクシー運転手ワリド・“ザ・ビースト”だ。そこで得た情報を元にプロゼルピオは壁画の足跡を辿り、世界中を旅することとなる。
  作品が最初に行きついた地デンマーク、現在の所在地となるロンドン、そして2015年にオークションが行われたロサンゼルス。
  旅が進むに連れ炙り出されてくるのは「ロバと兵士」に関わらずストリートアートのあるべき姿、芸術と価値、芸術と著作問題、そしてバンクシーがもたらす光と闇だった。
  バンクシーのアートがその文脈なしでは意味を持たなくなるのと同じように、特定のアート作品をベツレヘムから西洋のオークション会場へと壁ごと切り抜いて移すに至った背景を理解しなければ、そのアートの価値を見出すことはできず売れ残ってしまい、盗んだこと自体意味を持たなくなる。本作は美術品の収集家やディーラー、芸術修復家、キュレーター、著作権専門の弁護士、ストリートアーティスト、ベツレヘムの人々のインタビューを通して語られていく―。
  プロゼルピオは本作で観客に問いかける。「ストリートアートが刹那的なものであるなら、アーティストの意思通り作品が消えることを尊重すべきか?それとも後世のためにも保存していくべきなのだろうか?」